ろはんせんせい
露伴先生

冒頭文

昭和九年の冬に、岩波茂雄さんの厚意によつてはじめて露伴先生にお目にかかり、その時は熱海ホテルで数日を楽しく過ごした。 それ以来、月に数回、或(あるひ)は一二回ぐらゐづつお邪魔に参上して先生から教を受け、終戦の年までつづいたのであつた。 教を受けるといつても、こちらの予備が無いと何にもならないのである。実はさういふ日の方が私には多かつた。けれどもお邪魔にあがつて一二時間費し、門を

文字遣い

新字旧仮名

初出

「斎藤茂吉全集 第10巻」1954(昭和29)年1月

底本

  • 斎藤茂吉選集 第十二巻
  • 岩波書店
  • 1982(昭和57)年2月26日