もがみがわ
最上川

冒頭文

最上川は私の郷里の川だから、世の人のいふ『お国自慢』の一つとして記述することが山ほどあるやうに思ふのであるが、私は少年の頃東京に来てしまつて、物おぼえのついた以後特に文筆を弄(ろう)しはじめた以後の経験が誠に尠(すくな)いので、その僅(わづか)の経験を綴(つづ)り合せれば、ただ懐しい川として心中に残るのみである。 十三歳の時に上山(かみのやま)小学校の訓導が私等五人ばかりの生徒を引率して

文字遣い

新字旧仮名

初出

「東京日日新聞」1938(昭和13)年6月28日

底本

  • 斎藤茂吉選集 第十一巻
  • 岩波書店
  • 1981(昭和56)年11月27日