街子(まちこ)の父親は、貧しい町絵師でありました。五月幟(ごがつのぼり)の下絵や、稲荷(いなり)様の行燈(あんどん)や、ビラ絵を描(か)いて、生活をしているのでありました。しかし、街子はたいそう幸福でした。というのは、父親は街子を、このうえもなく愛していたし、街子もまた父親を世の中で一番えらくて好(い)い人だと思っていました。母親が早くなくなったので、街子は小学校を卒業すると、家(うち)にいて、父