おへんじ(いしはらじゅんくんへ)
御返事(石原純君へ)

冒頭文

御手紙を難有う。『立像』の新短歌について何か思ったことを書けとの御沙汰でしたから手近にあった第三号をあけてはじめから歌だけ拾って読んで行きました。読んでいるうちにふと昨夜見た夢を想い出したのです。 見知らぬ広い屋敷の庭に大きな池がある。大きな船が浮んでいる。それが船のようでもあり座敷のようでもある。天井がない。今に雨が降り出すと困るがと思っていると、自分がいつの間にかその船に乗って天幕を

文字遣い

新字新仮名

初出

「立像」1934(昭和9)年7月

底本

  • 寺田寅彦全集 第十二巻
  • 岩波書店
  • 1997(平成9)年11月21日