はるのおちば
春の落葉

冒頭文

翌日は明るくはれた初夏らしい日であつた。 ごたごたと敷かれた寢床をあげてしまふと、柩のなくなつた家の中は、急に廣々として何となく物足りなかつた。 早起きの伯父は老人らしいきちようめんな調子で若い者を起して歩いた。 一ばん年下の恭介叔父は、頭からふとんを被つたまま、眠つてゐるのか醒めてゐるのか、いくら起されても起きようとしなかつた。みんなの蒲團をかたづけながら、私はそつ

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「春の落葉」東京詩學協會、1928(昭和3)年4月

底本

  • 現代文學代表作全集 第三卷
  • 萬里閣
  • 1948(昭和23)年11月30日