われさへや 竟(つひ)に来ざらむ。とし月のいやさかりゆく おくつきどころことしは寂しい春であった。目のせいか、桜の花が殊に潤(うる)んで見えた。ひき続いては出遅れた若葉が長い事かじけ色をしていた。畏友(いゆう)島木赤彦を、湖に臨む山墓に葬ったのは、そうした木々に掩(おお)われた山際の空の、あかるく澄んだ日である。私は、それから「下(しも)の諏訪」へ下る途(みち)すがら、ふさぎの虫のかかって来るのを