かいそうろく
回想録

冒頭文

一 私の父は八十三で亡くなった。昭和九年だったから、私の何歳の時になるか、私は歳というものを殆と気にとめていない。実は結婚する時自分の妻の年も知らなかった。妻も私が何歳であるか訊(き)きもしなかった。亡くなる五六年前に一緒に区役所に行って、初めてその時妻の歳を知ったが、三つ位しか違わぬことが分った。私は現在目の前にあるものを尊しと思う。昔どうだったというようなことは全然自分の考に附き纏(

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 昭和文学全集 第4巻
  • 小学館
  • 1989(平成元)年4月1日