はんぎゃくのろれつ
反逆の呂律

冒頭文

1 囚衣を脱ぐ。しかし、着るものがなかつた。連れて来られた時は木綿縞の袷(あはせ)だつた。八月の炎天の下をそれでは歩けないだらう。考へて襦袢(じゆばん)一枚になつた。履きものには三銭の藁草履を買つた。 仙吉はかうして午前五時、S監獄の小門(せうもん)から出た。癪なので振りかへらずに歩いて行つた。畠と畠との間の白い道がステーションまで続いてゐる。彼のうしろで次第に高いコンクリートの塀

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 日本文学全集44 武田麟太郎 島木健作 織田作之助 集
  • 筑摩書房
  • 1970(昭和45)年11月1日