うちゅうき
雨中記

冒頭文

電車を降りて××橋から、雨の中を私と彼とは銀座の方面に向つて歩るきだした、私と彼とは一本の洋傘の中にぴつたりと身を寄せて、黒い太い洋傘の柄を二つの掌で握り合つてゐる。 男同志(ママ)の相合傘といふものは、女とのそれよりも涯かにもつと親密な感じがするものである、殊に私は彼とこんな機会でなければ、おたがひにかう激しく肩を打ちつけ合ふことはあるまいと考へた。 彼の肩は大きい、私の肩は

文字遣い

新字旧仮名

初出

「民謡詩人 第2巻12号」1928(昭和3)年12月号

底本

  • 新版・小熊秀雄全集第一巻
  • 創樹社
  • 1990(平成2)年11月15日