えぼしさんろくのぼくじょう
烏帽子山麓の牧場

冒頭文

水彩畫家B君は歐米を漫遊して歸つた後、故郷の根津村に畫室を新築した。以前、私達の學校へは同じ水彩畫家のM君が教へに來て呉れて居たが、M君は澤山信州の風景を描いて、一年ばかりで東京の方へ歸つて行つた。今ではB君がその後をうけて生徒に畫學を教へて居る。B君は製作の餘暇に、毎週根津村から小諸まで通つて來る。 土曜日に、私は斯の畫家を訪ねるつもりで、小諸から田中まで、汽車に乘つて、それから一里ば

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「中學世界 千曲川のスケッチより」博文館、1911(明治44)年6月

底本

  • 現代日本紀行文学全集 中部日本編
  • ほるぷ出版
  • 1976(昭和51)年8月1日