マグノリアのき
マグノリアの木

冒頭文

霧(きり)がじめじめ降(ふ)っていた。 諒安(りょうあん)は、その霧の底(そこ)をひとり、険(けわ)しい山谷の、刻(きざ)みを渉(わた)って行きました。 沓(くつ)の底を半分踏(ふ)み抜(ぬ)いてしまいながらそのいちばん高い処(ところ)からいちばん暗(くら)い深(ふか)いところへまたその谷の底から霧に吸(す)いこまれた次(つぎ)の峯(みね)へと一生けんめい伝(つた)って行きまし

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 風の又三郎
  • 角川文庫、角川書店
  • 1996(平成8)年6月25日