きのう・きょう・あす
昨日・今日・明日

冒頭文

昨日 当時の言い方に従えば、○○県の○○海岸にある第○○高射砲隊のイ隊長は、連日酒をくらって、部下を相手にくだを巻き、○○名の部下は一人残らず軍隊ぎらいになってしまった。 彼は蓄音機という綽名を持ち、一年三百六十五日、一日も欠かさず、お前たちの生命は俺のものだという意味の、愚劣な、そしてその埋め合わせといわん許りに長ったらしい、同じ演説を、朝夕二回ずつ呶鳴り散らして、年中声が涸

文字遣い

新字新仮名

初出

「キング 三月号」1946(昭和21)年3月

底本

  • 定本織田作之助全集 第五巻
  • 文泉堂出版
  • 1976(昭和51)年4月25日