きりがみねからわしがみねへ
霧ヶ峰から鷲ヶ峰へ

冒頭文

今年は何の意味にもハイキングに不適当である。平原のハイキングならまだしもだが、少くとも山岳の多い日本でのハイキングに或る程度山へ入らなければ意味を成さないのに、今年のやうにかうじめ〳〵した秋霖が打続いたのでは、よほど運が好くなければハイキングの快味を満喫するといふ訳には行かない。雨降りだと、雲煙が深く山を封してゐるから、折角山へ入つても山を見ることはできず、よほど厳重な雨支度をしてゐない限り、から

文字遣い

新字旧仮名

初出

「東京日日新聞」1934(昭和9)年9月26~27日

底本

  • 現代日本紀行文学全集 中部日本編
  • ほるぷ出版
  • 1976(昭和51)年8月1日