ついでに手数(てかず)将棋といふものを紹介しておかう。 この手数将棋といふのは、五十手なら五十手、百手なら百手——その約束した手数のあひだで、相手をつめてしまはなければならないのである。 芝居のなかの若い衆に、芝兼(しばかね)さんといふ人がゐた。若い衆といつても、年のころは五十がらみで、小屋のなかで弁当やら酒などをはこんできてサービスする商売であつたが、この芝兼さんは迚(とて)