たびにっき とうかいどうせん
旅日記 東海道線

冒頭文

社命を畏こまつて雲の彼方の露都を志し六月十二日雨持つ空の何となく湿つぽい夕弱妻幼児親戚の誰彼、さては新知旧識のなつかしき人々に見送られ新橋より大阪行の客となる。二十年来の知己横山天涯君統計好きの乾びた頭にも露の情けの湿はあつて同車して国府津(こふず)まで見送られお蔭で退屈を免れたのは嬉しかつたが、国府津からは全くの一人となつてとうとう雨さへポツ〳〵降つて来た。隣席に一露人の観光の為来朝して今浦塩へ

文字遣い

新字旧仮名

初出

「東京朝日新聞」1908(明治41)年7月8~14日

底本

  • 現代日本紀行文学全集 中部日本編
  • ほるぷ出版
  • 1976(昭和51)年8月1日