てんりゅうがわ
天竜川

冒頭文

一 山又山の上を、何日も偃松(はひまつ)の中に寝て、カアキイ色の登山服には、松葉汁をなすり込んだ青い斑染(まだらぞめ)が、消えずに残つてゐる、山を下りてから、飯田の町まで寂しい宿駅を、車の上で揺られて来たが、どこを見ても山が重なり合ひ、顔を出し、肩を寄せて、通せん坊をしてゐる、これから南の国まで歩くとすれば、高い峠、低い峠が、鋭角線を何本も併行させたり、乱れ打つたりして、疲れた足の邪魔をする

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 現代日本紀行文学全集 中部日本編
  • ほるぷ出版
  • 1976(昭和51)年8月1日