(一) 夏に入つてから、私の暮しを、たいへん憂鬱なものにしたのは、南瓜(かぼちや)畑であつた。 その葉は重く、次第に押寄せ、拡げられて、遂に私の家の玄関口にまで肉迫してきた、さながら青い葉の氾濫のやうに。 春の頃、見掛は、よぼ〴〵としてゐる老人夫婦が、ひとつ、ひとつ、南瓜の種を、飛歩きをしながら捨るやうにして播いてゐた。 数年前まで、塵(ごみ)捨場であつたその辺