どじょう |
| 泥鰌 |
冒頭文
(一) 夏に入つてから、私の暮しを、たいへん憂鬱なものにしたのは、南瓜(かぼちや)畑であつた。 その葉は重く、次第に押寄せ、拡げられて、遂に私の家の玄関口にまで肉迫してきた、さながら青い葉の氾濫のやうに。 春の頃、見掛は、よぼ〴〵としてゐる老人夫婦が、ひとつ、ひとつ、南瓜の種を、飛歩きをしながら捨るやうにして播いてゐた。 数年前まで、塵(ごみ)捨場であつたその辺は、見渡すほど広い空地に
文字遣い
新字旧仮名
初出
「旭川新聞」1927(昭和2)年8月25日~28日
底本
- 新版・小熊秀雄全集第一巻
- 創樹社
- 1990(平成2)年11月15日