ゆううつないえ
憂鬱な家

冒頭文

この一篇をマルキストに捧ぐ    (一) 屋根の上の物音、禿鷹のやうに横着で、陰気な眼をした、あんまり飛び廻つて羽の擦りきれた鴉の群であつた。 こ奴等は、私の家の上で絶えず仲間同志争つた。 私はジット室の中に閉ぢこもつて、この屋根の上を駈け廻る物音を聞いた。不吉な鳥達が、黒いあしうらで跳ね廻つてゐることを知ると、私はたいへん不快な気持にとらはれた。 そして今度

文字遣い

新字旧仮名

初出

「旭川新聞」1927(昭和2)年3月23日~26日

底本

  • 新版・小熊秀雄全集第一巻
  • 創樹社
  • 1990(平成2)年11月15日