らふ
裸婦

冒頭文

(一) 或る雪の日の午後。 街の角でばつたり、お麗さんらしい背をした女とすれちがつた。 女は鼠色の角巻を目深に、すつと敏捷に身をかはしたので、その顔は見えなかつた。 ——彼女だ、たしかにあの女にちがひない。 私は断定した、同時にぎくりと何物かに胸をつかれた。 彼女は雪路を千鳥に縫つて、小走りに姿を消してしまつた。 ——あの女の素裸を

文字遣い

新字旧仮名

初出

「旭川新聞」1927(昭和2)年1月18日~23日

底本

  • 新版・小熊秀雄全集第一巻
  • 創樹社
  • 1990(平成2)年11月15日