なぐる
殴る

冒頭文

(一) 俺はつくづくと考へる。世の中の奴らは、もちろん嘘で固まつてゐるといふ事実だ。 情なくなるから、あんまり他人(ひと)さまのことはいふまい。手近なところで、俺の信じてゐる彼女の態度はどうだ、だんだん世間なみに嘘をおぼえこみ、なんにもないところから、鶏を飛び出させたりする手品師のやうな真似を始めだした。 ——真個(ほんと)うにお可笑な方ね、お金が無くなれば、乞食のやうな

文字遣い

新字旧仮名

初出

「旭川新聞」1927(昭和2)年1月12日~16日

底本

  • 新版・小熊秀雄全集第一巻
  • 創樹社
  • 1990(平成2)年11月15日