あるおんなのしょうがい
ある女の生涯

冒頭文

おげんはぐっすり寝て、朝の四時頃には自分の娘や小さな甥(おい)なぞの側に眼をさました。慣れない床、慣れない枕、慣れない蚊帳(かや)の内(なか)で、そんなに前後も知らずに深く眠られたというだけでも、おげんに取ってはめずらしかった。気の置けないものばかり——娘のお新に、婆やに、九つになる小さな甥まで入れると、都合四人も同じ蚊帳の内に枕を並べて寝たこともめずらしかった。 八月のことで、短か夜を

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 嵐・ある女の生涯
  • 新潮文庫、新潮社
  • 1969(昭和44)年2月10日