こうせつきょうほうずえ
巷説享保図絵

冒頭文

金剛寺坂(こんごうじざか)      一 「お高(たか)どの、茶が一服所望じゃ」 快活な声である。てきぱきした口調だ。が、若松屋惣七(わかまつやそうしち)は、すこし眼が見えない。人の顔ぐらいはわかるが、こまかいものとくると、まるで盲目(めくら)なのだ。その、見えない眼をみはって、彼はこう次の間のほうへ、歯切れのいい言葉と、懐剣のようにほそ長い、鋭い顔とを振り向けた。 冬には珍し

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 巷説享保図絵・つづれ烏羽玉
  • 立風書房
  • 1970(昭和45)年7月10日