どくしょへんれき
読書遍歴

冒頭文

一 今日の子供が学校へも上らない前からすでにたくさんの読み物を与えられていることを幸福と考えてよいのかどうか、私にはわかない(ママ)。私自身は、小学校にいる間、中学へ入ってからも初めの一、二年の間は、教科書よりほかの物はほとんど何も見ないで過ぎてきた。学校から帰ると、包を放り出して、近所の子供と遊ぶか、家の手伝いをするというのがつねであった。私の生まれた所は池一つ越すと竜野の町になるのである

文字遣い

新字新仮名

初出

「文芸」1941(昭和16)年6月~12月号

底本

  • 現代日本思想大系33
  • 筑摩書房
  • 1966(昭和41)年5月30日