ききにおけるりろんてきいしき
危機における理論的意識

冒頭文

思想の問題は今や思想の危機の問題として現われている。人々は到るところ、あらゆる機会において、思想の危機について語りかつ叫ぶ。しかし彼らは自己の語りつつあるもの、叫びつつあるものが何であるかを理解しない。いな、みずから理解することなく、理解しようと欲することなく、語りかつ叫ぶということがそれ自身また思想の危機のひとつの特徴である。思想の危機の叫びのうちに表現されるところのものは、理論的意識の欠乏であ

文字遣い

新字新仮名

初出

「改造」1929(昭和4)年1月号

底本

  • 現代日本思想大系 33
  • 筑摩書房
  • 1966(昭和41)年5月30日