あじうりばたけ
味瓜畑

冒頭文

(一) お寺の境内の踊り場で男はさんざんに踊つた、疲れてへと〳〵になるほどに、呼吸がぜいぜいと鳴りだすほどに手を振つたり足を振つたりした。 その夜は月夜であつたので、踊りの輪をとりまく見物人もなかなか踊り見物を止して帰らうとしなかつたので、踊り子たちも調子づいて安心をして踊つてゐた。 一本の枯れた松の木がぎら〴〵白く光つて立つてゐて、その木にもたれかゝつた一人の若い娘さん

文字遣い

新字旧仮名

初出

「旭川新聞」1925(大正14)年3月26日~4月3日、5日

底本

  • 新版・小熊秀雄全集第一巻
  • 創樹社
  • 1990(平成2)年11月15日