つちのなかのばぞくのうた
土の中の馬賊の歌

冒頭文

私はこゝにひとつの思想を盛つた食餌を捧げるそれは悪いことかもしらないまた善いことかもしらない、たゞ私が信じてゐるだけのことである。 人々が寝静まつた真夜中にどこからともなく土の中から唄が聞えてくる、がや〴〵と大勢で話あつたり合唱したりそれは静かな賑やかな土の中の世界から洩れてくる陽気で華やかな馬賊の歌であつた。 歌は調子のよい賑やかなものであるが街の人々はふしぎにこの陽気な唄を

文字遣い

新字旧仮名

初出

「旭川新聞」1925(大正14)年1月1日

底本

  • 新版・小熊秀雄全集第一巻
  • 創樹社
  • 1990(平成2)年11月15日