もくもくせいかん
黙々静観

冒頭文

一個人の百年は、ちやうど国家の一年位に当るものだ。それ故に、個人の短い了見を以て、余り国家の事を急ぎ立てるのはよくないよ。徳川幕府でも、もうとても駄目だと諦めてから、まだ十年も続いたではないか。 時に古今の差なく、国に東西の別はない、観じ来れば、人間は始終同じ事を繰り返して居るばかりだ。生麦、東禅寺、御殿山。これ等の事件は、皆維新前の蛮風だと云ふけれども、明治の代になつても、矢張り、湖南

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 日本の名随筆 別巻95 明治
  • 作品社
  • 1999(平成11)年1月25日