あきくさのみ
秋草の顆

冒頭文

寡黙と消極的な態度とは私達一族の者の共通性格と言ってもいいのだ。私は郷家に帰省して、二三日の滞在中、殆んど父母と言葉を交(か)わさずに帰って来ることが少なくなかった。父もまた、田舎(いなか)からわざわざ私達に会いに出て来ながら、妻の問いに対してほんの二言か三言の答えをするだけで、私とは殆んど口をきかずに帰って行くことが多い。別に私達親子の間の愛情が薄いからというわけではないのだ。私が、父の顔から父

文字遣い

新字新仮名

初出

「今日の文学」1931(昭和6)年1月号

底本

  • 佐左木俊郎選集
  • 英宝社
  • 1984(昭和59)年4月14日