カラスキーしのゆうじょう
犂氏の友情

冒頭文

一 山川石亭先生が、蒼(あお)い顔をして入って来た。 「どうも、えらいことになりました」 急々如律令(きゅうきゅうにょりつれい)といったていで椅子に掛けて、ぐったりと首を投げ出している。 スパゲティを牛酪(バタ)で炒(いた)めている最中で、こちらも火急の場合だったが、石亭先生の弱りかたがあまりひどいので、肉叉(フゥルシェット)を持ったまま先生のほうへ近づいて行った。

文字遣い

新字新仮名

初出

「オール讀物」1939(昭和14)年12月

底本

  • 現代日本のユーモア文学 6
  • 立風書房
  • 1981(昭和56)年2月28日