ぼちてんぼうてい
墓地展望亭

冒頭文

巴里の山の手に、ペール・ラシェーズという広い墓地があって、そのうしろの小高い岡の上に、≪Belle-vue de Tombeau(ベル・ビュウ・ド・トンボウ)≫という、一風変った名の喫茶店(キャッフェ)がある。 訳すと、「墓地展望亭(ぼちてんぼうてい)」ということにでもなろうか。なるほど、そこの土壇(テラッス)の椅子に坐ると、居ながらにして、眼の下に墓地の全景を見渡すことが出来る。

文字遣い

新字新仮名

初出

「モダン日本」1939(昭和14)年7月~8月

底本

  • 久生十蘭全集 Ⅵ
  • 三一書房
  • 1970(昭和45)年4月30日