あごじゅうろうとりものちょう 20 きんぽうさ
顎十郎捕物帳 20 金鳳釵

冒頭文

花婿(はなむこ) 二十四日の亀戸天神(かめいどてんじん)様のお祭の夜からふりだした雨が、三十一日になっても降りやまない。 神田佐久間町の焙烙(ほうろく)長屋のドンづまり。古井戸と長屋雪隠(せっちん)をまむかいにひかえ、雨水が溝(どぶ)を谷川のような音をたてて流れる。風流といえば風流。 火鉢でもほしいような薄ら寒い七ツさがり。火の気のない六畳で裸の脛をだきながらアコ長ととど

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 久生十蘭全集 Ⅳ
  • 三一書房
  • 1970(昭和45)年3月31日