あごじゅうろうとりものちょう 13 えんとうぶね
顎十郎捕物帳 13 遠島船

冒頭文

初鰹(はつがつお) 「船でい」 「おお、船だ船だ」 「鰹をやれ、鰹をやれ」 「運のいい畜生だ」 「おうい、和次郎ぬし、船だぞい、おも舵だ」 文久二年四月十七日、伊豆国賀茂郡松崎村(いずのくにかものこおりまつざきむら)の鰹船が焼津(やいづ)の沖で初鰹を釣り、船梁(ふなばり)もたわむほどになって相模灘(さがみなだ)を突っ走る。八挺櫓(はっちょうろ)で飛ばしてくる江戸の鰹買船(かつおかい

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 久生十蘭全集 Ⅳ
  • 三一書房
  • 1970(昭和45)年3月31日