あごじゅうろうとりものちょう 11 ごだいさんののりもの
顎十郎捕物帳 11 御代参の乗物

冒頭文

神隠(かみかく)し もう子刻(ここのつ)に近い。 寒々としたひろい書院の、金蒔絵(きんまきえ)の京行灯(ぼんぼり)をへだてて、南町奉行池田甲斐守と控同心の藤波友衛が、さしうつむいたまま、ひっそりと対坐している。 深沈(しんちん)たる夜気の中で、とぎれとぎれに蟋蟀(こおろぎ)が鳴いている。これで、もうかれこれ四半刻。どちらも咳(しわぶき)ひとつしない。 江戸一とい

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 久生十蘭全集 Ⅳ
  • 三一書房
  • 1970(昭和45)年3月31日