あごじゅうろうとりものちょう 10 のぶせりだいみょう |
| 顎十郎捕物帳 10 野伏大名 |
冒頭文
客の名札(なふだ) 勝色定紋(かちいろじょうもん)つきの羽二重の小袖に、茶棒縞の仙台平(せんだいひら)の袴を折目高につけ、金無垢の縁頭(ふちがしら)に秋草を毛彫りした見事な脇差を手挾(たばさ)んでいる。どう安くふんでも、大身の家老かお側役といったところ。 五十五六の篤実な顔立ち。なにか心配ごとがあると見えて白い鬢のあたりをそそけさせ、いやな色に顔を沈ませている。重厚に、膝に手をおいて、 「実
文字遣い
新字新仮名
初出
底本
- 久生十蘭全集 Ⅳ
- 三一書房
- 1970(昭和45)年3月31日