新酒 「……先生、お茶が入りました」 「う、う、う」 「だいぶと、おひまのようですね。……鞴祭(ふいごまつり)の蜜柑がございます、ひとつ召しあがれ」 「かたじけない。……季節はずれに、ひどくポカつくんで、うっとりしていた」 大きなあくびをひとつすると、盆のほうへ手をのばして蜜柑をとりあげる。 十一月の入りかけに、四五日ぐっと冷えたが、また、ねじが戻って、この三四日は、春のよ