あごじゅうろうとりものちょう 06 さんにんめ |
| 顎十郎捕物帳 06 三人目 |
冒頭文
左きき 「こりゃ、ご書見(しょけん)のところを……」 「ふむ」 書見台(しょけんだい)から顔をあげると、蒼みわたった、鬢(びん)の毛のうすい、鋭い顔をゆっくりとそちらへ向け、 「おお、千太か。……そんなところで及び腰をしていねえで、こっちへ入って坐れ」 「お邪魔では……」 「なアに、暇ッつぶしの青表紙、どうせ、身につくはずがない。……ちょうど、相手ほしやのところだった」 「じ
文字遣い
新字新仮名
初出
底本
- 久生十蘭全集 Ⅳ
- 三一書房
- 1970(昭和45)年3月31日