馬の尻尾(しっぽ) 「はて、いい天気だの」 紙魚(しみ)くいだらけの古帳面を、部屋いっぱいにとりちらしたなかで、乾割(ひわ)れた、蠅のくそだらけの床柱に凭れ、ふところから手の先だけを出し、馬鹿長い顎の先をつまみながら、のんびりと空を見あげている。 ぼろ畳の上に、もったいないような陽ざしがいっぱいにさしこみ、物干のおしめに陽炎(かげろう)がたっている。 あすは雛の節句で、