だいこん
だいこん

冒頭文

十五日   水曜 どこかで道草を食っていた最後のB29が一機、海よりも青い空の中をクラゲのように泳ぎながらゆるゆるとサイパンのほうへ帰って行った。 アンデルセンなら、お得意の童話の擬人法で、〈戦争……それは最後の装甲を解き、おのがベッドへ寝に行った〉とでも書くところだろう。 日本は降参した。とうとう奇蹟は起きなかった。 一夜のうちに大西洋の底へ沈んだアト

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 久生十蘭全集 Ⅲ
  • 三一書房
  • 1970(昭和45)年2月28日