かりのどうじ
雁の童子

冒頭文

流沙(るさ)の南の、楊(やなぎ)で囲(かこ)まれた小さな泉(いずみ)で、私は、いった麦粉(むぎこ)を水にといて、昼の食事(しょくじ)をしておりました。 そのとき、一人の巡礼(じゅんれい)のおじいさんが、やっぱり食事のために、そこへやって来ました。私たちはだまって軽(かる)く礼をしました。 けれども、半日まるっきり人にも出会(であ)わないそんな旅(たび)でしたから、私は食事がすん

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • インドラの網
  • 角川文庫、角川書店
  • 1996(平成8)年6月20日再版