むざんやな
無惨やな

冒頭文

一 上野、厩橋(前橋)で十五万石、酒井の殿さま、十代雅楽頭忠恭(うたのかみただやす)は、四年前の延享二年、譜代の小大名どもが、夢にまであくがれる老中の列にすすみ、御用部屋入りとなって幕閣(ばっかく)に立ち、五十万石百万石の大諸侯を、 その方(ほう)が、 と頭(あたま)ごなしにやりつける身分になったが、ひっこみ思案のところへ、苦労性ときているので、権勢の重石(おもし)におしひしがれ、失策ば

文字遣い

新字新仮名

初出

「オール讀物」1956(昭和31)年2月号

底本

  • 久生十蘭全集 Ⅱ
  • 三一書房
  • 1970(昭和45)年1月31日