せいりんず
西林図

冒頭文

一 冬木(とうぼく)が縁の日向に坐って、懐手でぼんやりしているところへ、俳友の冬亭(とうてい)がビールと葱をさげてきて、今日はツル菜(な)鍋をやりますといった。 「ツル菜鍋とは変ってるね」 「ツル菜じゃない、鶴……それも、狩野流のリウとした丹頂の鶴です。鶴は千年にして黒、三千年にして白鶴といいますが、白く抜けきらないところがあるから、二千五百年くらいのやつでしょう」 「そんなも

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 久生十蘭全集 Ⅱ
  • 三一書房
  • 1970(昭和45)年1月31日