たいしゅういずはらこうににて |
| 対州厳原港にて |
冒頭文
對州へ渡るには博多から夜出て朝着く。博多へ渡るにもさうである。汽船は荷物を主にして居るのだから客少くして我々はみじめである。何處へ行つても朝鮮といふことをいふ。釜山なども對州の人が眞先に行つてそれから壹州の人間が行つて開いた相だ。北の方へ行つて見ると面白相だが船は不便だし陸路は險惡だし病人には迚も駄目だ。丈夫の人がゆつくり歩いて居るのには屹度いゝ處である。漁で持つて居る國だから百姓は下手らしい。昨
文字遣い
旧字旧仮名
初出
底本
- 長塚節全集 第二巻
- 春陽堂書店
- 1977(昭和52)年1月31日