よみから
黄泉から

冒頭文

一 「九時二十分……」 新橋のホームで、魚返(おがえり)光太郎が腕時計を見ながらつぶやいた。 きょうはいそがしい日だった。十時にセザンヌの「静物」を見にくる客が二組。十一時には……夫人が名匠ルシアン・グレエヴの首飾(ペンダント)のコレクトを持ってくることになっている。午後二時には……家の家具の売立。四時には……。詩も音楽もわかり、美術雑誌から美術批評の寄稿を依頼されたりする光

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 久生十蘭全集 Ⅱ
  • 三一書房
  • 1970(昭和45)年1月31日