すずきもんど
鈴木主水

冒頭文

享保(きょうほう)十八年、九月十三日の朝、四谷(よつや)塩町のはずれに小さな道場をもって、義世流の剣道を指南している鈴木伝内が、奥の小座敷で茶を飲みながら、築庭(ちくてい)の秋草を見ているところへ、伜(せがれ)の主水が入ってきて、さり気ないようすで庭をながめだした。 「これからお上りか」とたずねると、「はっ、上ります」と愛想よくうなずいてみせた。 伝内は主水がかねてなにを考え、なにをし

文字遣い

新字新仮名

初出

「オール讀物」1951(昭和26)年11月

底本

  • 歴史小説の世紀 天の巻
  • 新潮文庫、新潮社
  • 2000(平成12)年9月1日