くもとなめくじとたぬき
蜘蛛となめくじと狸

冒頭文

蜘蛛と、銀色のなめくじとそれから顔を洗ったことのない狸とはみんな立派な選手でした。 けれども一体何の選手だったのか私はよく知りません。 山猫(やまねこ)が申しましたが三人はそれはそれは実に本気の競争をしていたのだそうです。 一体何の競争をしていたのか、私は三人がならんでかける所も見ませんし学校の試験で一番二番三番ときめられたことも聞きません。 一体何の競争を

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 新編 風の又三郎
  • 新潮文庫、新潮社
  • 1989(平成元)年2月25日