モルガンおゆき
モルガンお雪

冒頭文

一 まあ! この碧(あお)い海水(みず)の中へ浸(ひた)ったら体も、碧く解けてしまやあしないだろうか—— お雪は、ぞっとするほど碧く澄んだ天地の中に、呆(ぼん)やりとしてしまった。皮膚にまで碧緑(あお)さが滲(し)みこんでくるように、全く、此処(ここ)の海は、岸に近づいても藍(あい)色だ。空は、それにもまして碧藍(あお)く、雲の色までが天を透かして碧い。 「まあ、何

文字遣い

新字新仮名

初出

「東京朝日新聞」1937(昭和12)年4月22日~5月7日

底本

  • 新編 近代美人伝 (下)
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1985(昭和60)年12月16日