おおはしすまこ
大橋須磨子

冒頭文

霜月はじめの、朝の日影がほがらかにさしている。澄みきった、落附いた色彩(いろ)と香(か)があたりに漂い流れている。 朝雨にあらわれたあとの、すがすがしい空には、パチパチと弾(はじ)ける音がして、明治神宮奉祝の花火があがっている。小禽(ことり)が枝から飛立つ羽(は)ぶきに、ふち紅(べに)の、淡い山茶花(さざんか)が散った。 今日中にはどうしても書いてしまわなければならないと思いな

文字遣い

新字新仮名

初出

「婦人画報」1920(大正9)年12月

底本

  • 新編 近代美人伝 (上)
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1985(昭和60)年11月18日