おおつかなおこ
大塚楠緒子

冒頭文

もうやがて二昔(ふたむかし)に近いまえのことでした。わたしは竹柏園(ちくはくえん)の御弟子(おでし)の一人(ひとり)に、ほんの数えられるばかりに、和歌をまなぶというよりは、『万葉集』『湖月抄』の御講義を聴講にいっておりました。すくなくても十人、多いときは二、三十人の人たちが、みんな熱心に書籍の中へ書入れたり、手帖(ノート)へうつされたりしていました。男子も交る時もありましたが、集りは多く女子(おん

文字遣い

新字新仮名

初出

「婦人画報」1915(大正4)年10月

底本

  • 新編 近代美人伝 (下)
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1985(昭和60)年12月16日