えんどう(いわの)きよこ
遠藤(岩野)清子

冒頭文

一 それは、華(はな)やかな日がさして、瞞(だま)されたような暖(あった)かい日だった。 遠藤清子の墓石(おはか)の建ったお寺は、谷中(やなか)の五重塔(ごじゅうのとう)を右に見て、左へ曲った通りだと、もう、法要のある時刻にも近いので、急いで家を出た。 と、何やら途中から気流が荒くなって来たように感じた。 「これは、途中で降られそうで——」 と、自動車(くるま)の

文字遣い

新字新仮名

初出

「婦人公論」1938(昭和13)年2~3月

底本

  • 新編 近代美人伝 (下)
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1985(昭和60)年12月16日