「きゃらまくら」および「しんはずえしゅう」
「伽羅枕」及び「新葉末集」

冒頭文

一は実を主とし、一は想を旨とする紅葉と露伴。一は客観的実相を尚び、一は主観的心想を重んずる当代の両名家。紅葉は「伽羅枕」を、露伴は「辻浄瑠璃(つじじやうるり)」を、時を同うして作り出たり。此二書に就き世評既に定まれるにも拘(かゝは)らず、余は聊(いさゝか)余が読来り読去る間(ま)に念頭に浮びし感を記する事となしぬ。 余は二作を読み了(をは)りける後、奇(く)しくも実想相分るゝ二大家の作に

文字遣い

新字旧仮名

初出

「女學雜誌 三〇八號~三〇九號」女學雜誌社、1892(明治25)年3月12日、19日

底本

  • 現代日本文學体系6 北村透谷・山路愛山集
  • 筑摩書房
  • 1969(昭和44)年6月5日